【英語で名言】知ってるようで知らない「人民の、人民による、人民のための政治」

“It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before us – that from these honored dead we take increased devotion to that cause for which they gave the last full measure of devotion – that we here highly resolve that these dead shall not have died in vain – that this nation, under God, shall have a new birth of freedom – and that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.”
Abraham Lincoln

「われわれの目の前に残された偉大な事業にここで身をささげるべきは、むしろわれわれ自身なのである。―それは、名誉ある戦死者たちが、最後の全力を尽くして身命をささげた偉大な大義に対して、彼らの後を受け継いで、われわれが一層の献身を決意することであり、これらの戦死者の死を決して無駄にしない ために、この国に神の下で自由の新しい誕生を迎えさせるために、そして、人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、われわれがここで固く決意することである。」
エイブラハム・リンカーン

【文法解説】

It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before usの後、4つの – that節が続きます。現代の英語ではあまり見ない構成で文法の解釈が難しく、プロの英語研究者も頭を悩ませる文のようです。身も蓋もない言い方ですが、素人ならなおさら文法的に理解できなくても問題はなく、「これはこうゆうもんだ」と思っておきましょう。「いやいやそんなの納得できるか!」という方はこちら(明治学院大学リポジトリ:法学研究94号)を参考にしてください。

rather[副]: むしろ、それより、多少は
rather for us で「むしろ我々」の意味を作っています。
dedicate[動]: 捧げる
honored[形]: 名誉ある
devotion[名]: 献身、熱愛、信心

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リンカーンの言葉、“government of the people, by the people, for the people”「人民の、人民による、人民のための政治」は広く知られており、教科書にも載っているため多くの人が一度は聞いたことがあるかと思います。しかし、この部分だけが有名過ぎて、そもそも「いつ」「どこで」「どういう状況で」というのは意外と知られていないのではないでしょうか。

この有名な言葉は、元々はリンカーンの「ゲティスバーグ演説」と呼ばれる演説の最後に出てくる一節です。

ゲティスバーグ演説とは1863年11月19日の南北戦争の最中、アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンがペンシルベニア州ゲティスバーグ「国立戦没者墓地」で行った演説です。戦没者を追悼しながらも、アメリカ市民の士気を高めようとする狙いがありました。

ものすごくざっくり言えば、「南部と北部の戦争を乗り越えてアメリカ人みんなで結束してホンモノの自由の国を作りましょう」という内容です。以下はその全文です。

Four score and seven years ago our fathers brought forth on this continent, a new nation, conceived in Liberty, and dedicated to the proposition that all men are created equal.

Now we are engaged in a great civil war, testing whether that nation, or any nation so conceived and so dedicated, can long endure. We are met on a great battle-field of that war. We have come to dedicate a portion of that field, as a final resting place for those who here gave their lives that the nation might live. It is altogether fitting and proper that we should do this.

But, in a larger sense, we can not dedicate – we can not consecrate – we can not hallow – this ground. The brave men, living and dead, who struggled here, have consecrated it, far above our poor power to add or detract. The world will little note, nor long remember what we say here, but it can never forget what they did here. It is for us the living, rather, to be dedicated here to the unfinished work which they who fought here have thus far so nobly advanced. It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before us – that from these honored dead we take increased devotion to that cause for which they gave the last full measure of devotion – that we here highly resolve that these dead shall not have died in vain – that this nation, under God, shall have a new birth of freedom – and that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.

87年前、われわれの父祖たちは、自由の精神にはぐくまれ、人はみな平等に創られているという信条にささげられた新しい国家を、この大陸に誕生させた。

今われわれは、一大内戦のさなかにあり、戦うことにより、自由の精神をはぐくみ、自由の心情にささげられたこの国家が、或いは、このようなあらゆる 国家が、長く存続することは可能なのかどうかを試しているわけである。われわれはそのような戦争に一大激戦の地で、相会している。われわれはこの国家が生 き永らえるようにと、ここで生命を捧げた人々の最後の安息の場所として、この戦場の一部をささげるためにやって来た。われわれがそうすることは、まことに 適切であり好ましいことである。

しかし、さらに大きな意味で、われわれは、この土地をささげることはできない。清めささげることもできない。聖別することもできない。足すことも引 くこともできない、われわれの貧弱な力をはるかに超越し、生き残った者、戦死した者とを問わず、ここで闘った勇敢な人々がすでに、この土地を清めささげているからである。世界は、われわれがここで述べることに、さして注意を払わず、長く記憶にとどめることもないだろう。しかし、彼らがここで成した事を決して忘れ去ることはできない。ここで戦った人々が気高くもここまで勇敢に推し進めてきた未完の事業にここでささげるべきは、むしろ生きているわれわれなのである。われわれの目の前に残された偉大な事業にここで身をささげるべきは、むしろわれわれ自身なのである。―それは、名誉ある戦死者たちが、最後の全力を尽くして身命をささげた偉大な大義に対して、彼らの後を受け継いで、われわれが一層の献身を決意することであり、これらの戦死者の死を決して無駄にしない ために、この国に神の下で自由の新しい誕生を迎えさせるために、そして、人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、われわれがここで固く決意することである。

引用元:AMERICAN CENTER JAPAN米国の歴史と民主主義の基本文書大統領演説



そもそも南北戦争が起きたのは、奴隷制に反対する共和党のリンカーンが大統領に当選したのが始まり。奴隷制存続を望む南部11州が合衆国から脱退して、アメリカ南部連合を結成。リンカーン率いる北部と南部連合とで、国を分断する国内戦争が勃発しました。

リンカーンはこの「ゲティスバーグ演説」を含め、北軍のリーダーシップを取ってきました。ついには南部連合は降伏し北軍の勝利で終戦しますが、その直後にリンカーンは南部支持者に暗殺されてしまいます。

南北戦争終結後、1865年のアメリカ合衆国憲法修正13条で正式に廃止されました。しかしその後も黒人に対するひどい差別は続き、後世にキング牧師が現れるまで変わる事はありませんでした。

そしてグローバル社会と呼ばれる現代、差別はなくなっておらず、社会の格差も広がるばかりです。いつの日か「人民の人民による人民のための政治」が実現することをただただ願うばかりです。



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