There is nothing either good or bad, but thinking makes it so.
William Shakespeare
善も悪も存在しない。考え方がそれを作っているのだ。
ウイリアム・シェイクスピア
【文法解説】
not A but B: AではなくB
以下の例文のように、よく使われる構文です。
She is not Korean but Chinese.
彼女は韓国人ではなく中国人です。
このシェイクスピアの言葉では not の代わりに nothing が使われており、either good or bad(良いか悪いか)ではなく( but 以下)である、という形になっています。この構文の場合は but を「しかし」と訳さないようにしましょう。
thinking makes it so.
make A B: AをBにする。
thinking は think という動詞に-ing をつけて動名詞にしたもの。動名詞とは、その名の通り動詞を名詞の形にして、名詞として使えるようにした言葉。これで「考える」という動詞が「考えること」という名詞になります。
この言葉は「ハムレット」からの台詞です。
何が良くて何が悪いのか。それは自然界の絶対的なルールなどではなく、人間が作り上げた定義に過ぎません。誰かにとっての正義は、他の誰かを傷つけることもあります。ネット上ではよくある話ですね。例えば、以下を見てください。
「若い女性が中年男性に殺された。」
これ、どんな状況を想像しましたか?金銭トラブル?個人的な恨み?男性が一方的に女性に歪んだ好意をもった挙句に起きた悲劇?女性にはなんの非もない?もしくは気が強い女性が気弱な男性を毎日職場でイジメ抜いた結果、男性の怒りが爆発してしまった?
まあ想像すればキリがありません。すべては想像です。ハッキリしている事は、「若い女性が中年男性に殺された」という事実があるだけです。どんな理由があれ、殺人は犯罪です。しかしそれは現代社会の話。時代背景によっては名誉を守るため敵討ちのためなら殺人も許されたりします。殺人の良し悪しすら人間が作り出した概念なのです。
もちろん「だから殺人って騒ぐほど悪いことじゃない」などという意味ではありません。善悪というものは、集団が住みやすいように考え出された人類の知恵であり、自然の摂理ではないということです。
■シェイクスピアってなんで未だに愛読されてるの?
シェイクスピアが詩人・劇作家として活躍したのは1500年代。当時の日本は安土桃山時代です。そんな昔の作家が書いた作品が未だに愛読されているのはなぜなんでしょうか?それは、この「ハムレット」の台詞のように、時代を超えた人間の性をテーマにしているからでしょう。シェイクスピアの特徴は、他の代表作「ロミオとジュリエット」「オセロ」「マクベス」なども含め、王位継承をめぐる欲望や復讐、男女の愛憎や嫉妬など、人間の生々しい感情の動きを表現しているところです。この時代から現代に至るまで、人間の心というものは全く変わっていないことがわかります。「シェイクスピアって名前を知ってるだけで、作品は読んだことない」という人は、この機会に読んでみてください。いかに後世の文学に影響を与えたかがよくわかります。



