※ この記事には広告・PRが含まれています

学校の授業では「英語には敬語がない」と教えられることが多いようです。単語レベルで考えると「自分」を表す主語は、日本語では「わたし、わたくし、オレ、僕」など状況や立場によって使い分けますが英語では” I “の1語で片付きます。兄弟姉妹を表す言葉も”brother”, “sister”と上か下かは意識されません。それは英語圏のアメリカやイギリスは民主主義の国であり、上下の分け隔てのない社会だから、と思えます。
しかし現実はそんなことありません。英語にも敬語は存在しますし、アメリカやイギリスは日本以上に階級社会です。教科書で習う英語は日常会話が中心のため、あまり社会の階級差を感じることはありません。しかし実際は、上流階級が使う英語と庶民の英語とは大きく違います。話す相手の肩書や年齢など、ネイティブも立場によって言葉を使い分けています。ビジネスにおいては、日本と同じようにお客様に対しては丁寧な言葉遣いで話しているのです。
■敬語の基本は過去形
教科書では日常会話が中心と言いましたが、じつは少しだけ敬語が出てきます。中学時代の英語の授業を思い出してください。以下のような文章がありました。
Do you want some coffee?
↓丁寧に言い換える↓
Would you like some coffee?
Can you open the door?
↓丁寧に言い換える↓
Could you open the door?
wantの丁寧な言い方がwould like、can you ~?の丁寧な言い方がCould you ~ ? と習いました。
これがなぜ丁寧となるかというと、英語には距離感を過去形で表現する性質があるからです。。その距離感が敬語という考え方です。
先ほどの文章を見てみましょう。ひとつめの
Do you want some coffee?
ですが、直訳すると「あなたはコーヒーがほしいですか?」となります。よくよく考えてみればかなり直球な聞き方ですよね。じつはwantという動詞は、我々が思っている以上に強い言葉なのです。洋楽で恋愛を歌った歌詞でも”I want you.”と出てきますが、それくらい強い気持ちが込められています。なので例えば飲食店の店員がお客さんにコーヒーを勧める時、「コーヒーほしいですか?」は直球過ぎるので、「コーヒーはいかがですか?」というニュアンスで
Would you like some coffee?
と表現します。

■Can you ~ ? と Could you ~ ?
過去形が距離感を生み出す、という同じ理由からcanをcouldにすることで敬語になります。先ほどの2つ目の文章を見てみましょう。
Can you open the door?
Could you open the door?
この2つの違いは、日本語のニュアンスでいえば以下のようになります。
ドアを開けてもらえる?
ドアを開けてもらえますか?
canがcouldになるだけで言葉の響きが全く違って聞こえます。友達同士では敬語を使ったりしないのでCan you ~ ? を使うのが普通です。しかし、いくら親しい仲でも少し頼みにくいことをお願いする時は、Could you ~ ?を使います。例えばお金を貸してほしい時などは、
Could you lend me $20?
と言います。
■仮定法も過去形
距離感を生み出す過去形は、敬語のみで使うものではありません。仮定法で過去形が使われる理由も同じく距離感です。仮定法について詳しくは以下の記事をご覧ください。
■おわりに
過去を表すだけではない動詞の過去形。その性質がわかれば、表現できる引き出しがぐっと増えます。様々な場面で実際に使って試してみましょう。