AIの発達、将来は英語学習が必要なくなる?【社会人の英語学習】

※ この記事には広告・PRが含まれています

【画像】AI翻訳

近年のAI技術の発達はこれまでにないスピードで進み、それに伴い翻訳・通訳ツールのクオリティも以前に比べて格段に上がりました。Google翻訳やChatGPT、ポケトークなどのツールをうまく使えば海外旅行くらいは語学力ゼロでも大丈夫です。

ここまでくると、果たしてこの先は英語学習は必要なくなるかも?という疑問がわいてきます。

結論から言うと、答えはNOです。ある程度型の決まった事務仕事は減るかも知れませんが、AIが発達しても英語学習は必要であり続けます。



言葉の裏にあるもの

納期連絡やアポ取りなどの事務連絡は、ある程度の決まり文句で対応できます。AI頼りでよいでしょう。しかし、そもそも言語とはツールのひとつ。血の通ったコミュニケーションは言語だけでは成り立ちません。

とある日本の観光地での出来事です。外国人観光客がとある飲食店を訪れた時、英語ができないウエイターはタブレットを使って会話を始めました。外国人客が何か聞かれる度にタブレットをタップ、アウトプットされたもので対応を続けました。終始タブレットばかりを見て相手と目を合わせようともしないウエイターにムッとした観光客は「わたしは機械に話しているのではない!あなたに話しているんだ!」と声を荒げました。近年、このような事例が観光地で増えているようです。

現地の人との触れ合いも旅行の醍醐味にひとつ。それをタブレット片手に無機質な対応をされたら気分が台無しです。



感情の共有、心で分かり合う

例えば「日本への原爆投下」といったデリケートな話題の場合、言語力だけの問題ではなくなってきます。「原爆を落としたアメリカ人は許せない」だとか、「原爆のおかげで戦争を終わらせることができたんだ」とか、どんな背景があってその考え方になったのか、どれくらい理性的に考えているのかもしくは感情的になってしまっているのか。言語だけでは言い表せない事も多々あります。少し長い引用になりますが、小児精神科医の内田舞さんのエピソードを紹介します。

10年以上前のことですが、アメリカ人の学生とこんな会話がありました。その学生は日本語を学び、日本を訪れたときに広島の原爆記念館を訪ねたそうです。そこで日本人が「こんなことをしたアメリカ人は絶対に許せない」と言っていたのを聞き、それに反感を覚えたと話しました。

「アメリカがあのタイミングで原爆投下して、どれだけ破壊力があるかを世界中に知らしめられたことで、冷戦中の核兵器使用が防がれた。世界の滅亡を避けられたじゃないか。大体、日本は被害者なのか。ユダヤ人大虐殺をしたドイツと連盟を組んで、他のアジアの国にもひどいことをしたじゃないか。それでいて第二次世界大戦といったら原爆投下の被害ばかり語るのっておかしくない? そもそも戦争中っていろんな国がめちゃくちゃひどいことをしたわけだから、日本が、日本が、って核兵器についてばかり言うのはおかしいと思う」

その場にいた日本人は私ひとりだったので、とても孤独な状況でしたが、私は勇気を出してこう発言しました。

「日本が他国にした酷いことはもっと語られなければならない。戦時中、日本国政府が日本国民に発したメッセージの問題に対しても、もっと学ばなければいけないことはたくさんある。日本国政府が当時、国際政治の中でのよくない判断があったことも間違いない」

さらに続けてこう言いました。

「でも、それでも私は、日本から『Never Again(二度と繰り返さない)』というメッセージは発し続けなければならないと思う。

誰かの責任だということは簡単だけど、それだけが注目されるべき問題ではない。核戦争や核兵器についての議論が『冷戦での使用を防ぐための投下』というような、『理論的には』と、実体験から隔離された机上の空論のように語られることは良くないことだと思う。実際、原爆投下後のヒロシマやナガサキでどれだけの人がどのように亡くなったのか……。 投下とともに熱波で瞬間的に消えてしまった命、爆風にとばされた人、ガラスのかけらが体中に刺さった人、皮膚がとけ落ちてしまった人、ひどい火傷で川に飛び込んで亡くなった人、白血病で血を吐きながら亡くなった人、親を亡くした子どもたち……。もっともっと様々な生き様がそこにあり、その人々のストーリーなしには核兵器は語られるべきではない。それがNever Againに繋がると思う」

さらに、同じ会話の中で、アメリカ人の大学生から「9.11とカミカゼ特攻隊を比べるのを嫌がる日本人がいるのもおかしい」という発言がありました。

私は「航空機で突進する、という点で、9.11のテロリストとカミカゼ特攻隊の類似点はわかる。そして戦争中ではないときに、一般市民を無差別殺人した9.11のテロリストと特攻隊の加害は違う、という人がいるのもわかる。でも、何よりも『カミカゼ』という言葉でしか特攻隊のことを知らずにイメージするものと、実際の人のストーリーを通して抱くイメージは全く違うものだと思うよ」と話ました。

私は、両親が以前「特攻の町」知覧を訪れたときに買ってきた本がとても印象的だったので、アメリカにも持って来ていました。私はその本を見せて、本の中に掲載された出陣の前に親や好きな子宛に書いた特攻隊員の手紙を訳しました。

「今更だけど読みたい本」の題名を綴った手紙、特攻への恐怖を綴った手紙、好きな子への想いを綴った手紙。写真を見るとまだあどけない10代の思春期の子どもの特攻隊員もいたことを伝えました。

私の発言を聞いていたアメリカ人の友人達は「単なる敵国のクレイジーな戦略だとしか教わってこなかったが、こんなに若い子たちだったなんて知らなかった……。こんな子どもの兵士が、心の中では怖いと思いながら飛んでいたなんて考えたこともなかった」「舞が話してくれなかったら一生知らなかったと思う」とさまざまな感想を伝えてくれました。

このときは、この場で日本人が私ひとりだったこともあり、日本の人のストーリーをここで語れるのは私しかいないという重圧と、だからこそ湧く使命感を感じ、「わかってもらえるだろうか」と不安を抱えながら、私なりの言葉で伝えたのですが、学生たちの優しい言葉を受けて、なんだかわからないような感情が溢れてきて、皆の前で泣いてしまいました。

※出典:「原爆投下は正当だった」アメリカ人学生の言葉に日本人精神科医が返した言葉

世の中には、何が正しくて何が間違っているなんて簡単に言えない事はたくさんあります。このアメリカ人学生は原爆投下は間違っていないと信じていました。今も信じているかもしれません。しかし、少なくとも内田さんの訴えかけるような語り口と感情があふれ出た涙を見て、心を揺さぶられるものがあったはずです。もしこれが翻訳ツールを使った対話だったら、内田さんの想いはそれほど伝わっていなかったでしょう。



もし全てを超越したAIが登場したら

もし将来、そんな人間の繊細な心や感情すらもカバーできるような超高性能AIが登場したなら、さすがに我々が外国語を学ぶ意味はなくなるかもしれません。しかしそこまでテクノロジーが発達してしまうともはやシンギュラリティ(※)の時代。英語学習どころか仕事の意味や制度、さらには人間としての在り方が大きく変わる世界になるでしょう。もしかしたら貨幣も無くなっているかもしれません。英語学習は必要か?などと言っている次元の話ではありません。しばらくはまだまだ英語学習が必要な時代は続くでしょう。

シンギュラリティ(Singularity): 英語で「特異点」の意味。「人工知能(AI)」が人類の知能を超える転換点(技術的特異点)、または、それにより人間の生活に大きな変化が起こるという概念のこと。
出典: 大塚商会公式サイトより
https://www.otsuka-shokai.co.jp/words/singularity.html

タイトルとURLをコピーしました