※ この記事には広告・PRが含まれています

「受験英語は役に立たない」は本当?
「受験英語は文法や単語の知識ばかりで実践では役に立たない。
昔から英語教育が受ける批判です。6年間も勉強したのにほとんど会話ができない、というのが主な理由です。本当に受験英語は役に立たないのでしょうか?
結論からいえば、受験英語は役に立ちます。
受験英語が実践では使えないと感じるのは、身につけた知識を使ってみる経験がないからです。受験英語を野球に例えてみましょう。受験英語で勉強する文法や単語は素振り・キャッチボール、筋トレなどの基礎練習です。受験英語とは、まさに基礎練習中心のカリキュラムになっています。優れた選手になるためには基礎練習は不可欠です。しかし、練習試合などで実践感覚を身につけないとグラウンドで動ける選手にはなれません。逆に練習試合ばかりで基礎練習をおろそかにしてもすぐに限界がきます。
受験英語とは、やっていることは間違っていないが練習メニューが偏っているから成果が出にくいのです。
近年の学校現場ではALTの導入など、実践コミュニケーションの要素も取り入れられて少し変わってきてはいますが、テストで点数を取ることが目的の受験制度がある限り、根本的に変わることはありません。
日本の英語教育制度を批判したところで何も進みません。受験英語で得たものをいかに上手くアウトプットしていくかが次のステップです。
受験英語は英会話力の土台作り
一般的に「あの人は英語ができるよね」と言われる時は「英語が話せる」というイメージです。一口に英語力といっても英語を書ける文章力や専門的な英文を読める読解力など様々ですが、やはり世間の目は「外国人とスマートに英語で会話できる人=英語ができる人」と捉えがちです。
受験英語を経験した結果、目に見えて成果が出るのはリーディング、リスニングです。受験英語は基本的にインプット学習なので当然です。逆にアウトプットのライティング、スピーキングは成果が見えにくいため、上達を実感しにくい面があります。
実際は英語基礎力が上がっているので英会話力の土台は作られています。アウトプット練習が足りていないだけです。
受験英語が役に立った経験
筆者のアメリカ留学時代、受験英語が大いに役立ったエピソードをお話しします。大学の授業でクラスメイトとペアを組んで論文を書き上げる課題がありました。パートナーはモハメドというアラブ人留学生。よくしゃべる明るい性格で、アメリカ人ともすぐに仲良くなっていました。私は英語力には自信があったもののコミュ力不足でなかなか上手く話せず、彼をうらやましく思ったものです。そんな彼とのペアワーク、書き上げるパートの役割分担を決めて、1週間後にお互い書いたものを見せあう約束をしました。
そして打ち合わせの日、彼の書いた論文を読んで愕然としました。スペルミスは当たり前、文章の構成は文法以前の問題でした。「おいおいなんで動詞が3つもあるんだよ、関係代名詞でつないでる・・・わけでもないな。そもそも主語はどこだよ・・・」、そんな感じで解読不能。さすがにそこまでハッキリとは言えず、モハメドには「え?これってどういうこと?どれが主語?ちょっとわかりにくいんだけど」と聞いても、「いや、俺の英語は正しい」の一点張り。なんだその根拠のない自信は・・・こんなん提出できねーよ・・・と途方にくれました。ちなみに普段から彼の話す英語は文法がメチャクチャです。それでもその場のノリでアメリカ人にも通じていたようですが、いざ文章におこしてみるとさっぱりわかりません。
話し合いの結果、モハメドが主に情報収集と下書きの組立て、私が最後に全体の校正・完成させるという役割分担で落ち着きました。文法力・文章力などの基礎力は彼より私の方がずっと高いということは素直に認めてくれました。無事に論文を書き上げて提出できましたが、まさかこんな場面で受験英語のありがたみを知るとは夢にも思いませんでした。
受験英語が苦手だった大人の勉強法
なかには「いや英語が苦手だったからそもそも受験英語なんて身についていないし」という人もいるでしょう。それはそれで問題ありません。これからアウトプット中心の英語学習をしながら、必要に応じて文法の知識を吸収していけばよいのです。今はもう受験生ではありません。苦行のような受験勉強を繰り返す必要はどこにもないのです。
とにかく英語を話してみること。間違ってもよいので、ジェスチャーやノリと雰囲気で押し切ってもよいので、とにかくアウトプット。「自分の英語が通じた!」という小さな成功体験が重要です。そうすると英語が楽しくなるし、「あの時はこう言えばよかったかも」と悔しい思いがモチベーションになります。そうすると文法や単語の勉強も苦ではなくなってきます。最初は話せないかもしれません。しかし慣れてくると段々と昔の知識を思い出して経験を重ねるごとにインプットしたものを使いこなせるようになっていきます。それを実感できたらしめたもの、英語学習が楽しくなります。