英語学習で一番の難関は、もしかしたら単語の暗記かもしれません。リスニングやリーディングなどと違い、ただただ覚えるしかない地味な反復作業です。難しいというよりも、モチベの維持が課題です。
そんな退屈な単語学習、 残念ながら魔法の単語勉強法は存在しません。 しかし、少し勉強法を工夫するだけでストレスは大きく減ります。
ここでは、挫折しない英単語のマインドセットの作り方を解説します。
本当に記憶力は落ちているのか?
単語力は大切ですが、単語学習は基本的に暗記学習です。そして残念ながら暗記する作業は地味でつまらないものです。特に社会人になると、記憶力の衰えを感じて苦手意識を持ってしまいがちです。
しかし落ち込む必要はありません。記憶力は鍛えれば向上します。脳は筋肉と同じで、使わなければ衰え、使っていると鍛えられます。暗記学習を続けていると、筋トレで身体が鍛えられるように確実に記憶力はアップします。
「そうはいっても学生の頃の記憶力は戻らない」と悲観的になるかもしれませんが、じつはそれほど差はありません。学生時代の方が覚えがよかったと感じるのは、わりと思い出補正がかかっています。
サイト管理人であるわたし自身、講師として現役学生に英語を教えているのですが、現役バリバリなのに皆さんビックリするくらいすぐに忘れます。あくまでわたしの体感ですが、現役学生と社会人の生徒さんの間にはそれほど大きな記憶能力の差は感じません。現役学生が有利なのは脳の性能そのものよりも、毎日学校で授業を受けていることが大きいようです。学校では週に2,3回ある英語の授業のなかで、同じ単語と何度も再会します。そもそも学校教育というものは、誰でも学べるように文部科学省の授業計画が設計されているのです。
大人の記憶力は自分が思っているほど衰えていません。一番の敵は「年のせいで記憶力が落ちている」と思い込んでしまう事だと心得ましょう。
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1回で完璧に覚えようとしない
新しい単語を覚えたつもりなのに次の日にはもう忘れている。そういって嘆く社会人の生徒さんもいますが、それは当たり前です。そもそも人間の脳は新しい事を1度で記憶できるほどスペックが高くありません。「一度で覚えられなくて当然」という事実を受け入れて、後日4度5度と何度も繰り返し復習する。一度で覚える努力をするよりも、その単語と再会する機会を設ける方が確実に効果的です。スタディサプリの講師として知られる関正生先生の言葉を借りると、単語学習は「うろ覚えの連続」です。
一度会っただけの人の顔と名前を覚えられない。引っ越し先の新住所が記憶に定着するのに時間がかかる。英単語もそれと一緒です。何度も出会わなければ脳に定着しません。
文章をまるごと覚えるつもりで
単語帳のように表に単語を書いて裏に意味を書く。ただ単に単語と意味を暗記する方法は、頭に残りにくいです。例えば”opportunity”という単語を覚えようとする時、ただ意味を「機会、好機」と無機質に覚えるのではなく、例文ごと覚えてしまうのです。
It was a wonderful opportunity to start the new business.
それは新しい事業を始めるのに絶好の機会だった。
例文を一語一句完璧に暗記する必要はありません。文の大体の意味さえ覚えていればよいのです。一度学習した単語を思い出そうとする時、単語の意味だけを覚えた場合より、文ごと覚えた方がイメージが頭に残りやすいので、思い出す可能性はずっと高くなります。
また、単語を目で読むだけでなく、声に出して読んで、聴いて、書いてみましょう。五感をフル活用することで身体に染み込ませるのです。
■単語のイメージをとらえる
(have = 持つ) のように単語学習は日本語の意味で覚えることが一般的です。しかし、単語の意味は1つとは限りません。以下の例文を見てみましょう。
I have a dog.
わたしは犬を飼っています。
I have a headeache.
頭が痛いです。
She is having lunch.
彼女は昼食を取っています。
すべてhaveを使った文章ですが、どれも「持つ」とは和訳できません。文脈によって日本語が違ってきます。例えば「話す」という単語にしてもspeak, talk, say, tellと4種類もあります。そして、それぞれニュアンスが異なります。
意味を覚えるだけでなく、その単語が持つイメージも含めて学習しましょう。
単語集は有効?
語彙力を増やすためには単語集などの学習書もひとつの手です。単語集には意味はもちろん例文や語源、語呂合わせなどの覚え方のコツまで載っているものもあります。上手く使いこなせば飛躍的な語彙力アップが期待できます。
しかし難点としては、単語集の種類が多すぎて自分と相性が良いものを探すのが大変なことと、人によっては単語集を使っての学習が「なんとなく身に入りにくい」「なんか面白くない」など、感覚的に不向きな場合もあります。逆に向いている人は「勉強しやすい、覚えやすい」「クイズ感覚で楽しい」と感じるようです。相性ばかりは自分にしかわからないので、実際に試しながら見極めましょう。
紙の辞書は必要?
ひと昔前は、知らない単語を調べる時は紙の辞書しかありませんでした。今では電子辞書やスマホの辞書アプリ、またブラウザだけでネットで調べることができます。もはや紙の辞書がなくても不自由しません。紙の辞書はもう必要ないのでしょうか?
結論から言えば、紙の辞書は今でも強力なツールです。例えば、英文を読んでいる時に知らない単語と出会った時、読み進めるために意味を調べるだけならスマホだけで充分でしょう。時間もかからないし合理的です。しかし単語の記憶定着度でいえば、デジタルツールよりも紙の辞書で調べた時の方が効果的のようです。具体的なデータがあるわけではありませんが、英語学習者の体験談としてはよく聞く話です。ページをめくる作業から始まり、意味を確認しながら解説と例文を読む、この紙辞書独自の一連の流れがデジタルよりも記憶に残りやすいのかもしれません。
覚えるスピードは人それぞれ
受験勉強のクセが抜けないせいか、焦って1日でも早く1つでも多く単語を覚えようと焦る生徒さんが多いです。しかし今は受験生ではありません。そこまで語彙力を重く受け止めなくても大丈夫です。人と比べず、「すぐに覚えられなくて当たり前」と自分のペースを受け入れてあせらず着実に身につけていきましょう。